コンクリートが剥き出しになった壁には、そこかしこに大小様々なひび割れが走っていた。壁の上部を見上げ適当に目に付いた亀裂をアミダクジのように下方へ辿ると、その先端へ行き着くまでに八本の新たな亀裂を発見した。これらの亀裂はこれからも進行し、いつかは一本の複雑な模様に変貌を遂げるだろう。
 私は階段を一歩一歩確実に上がりながら、そんな幾何学模様を形成しつつある壁を目で追っていた。
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